この記事で分かること

  • 開発のどの工程にAIを入れている会社が、どれくらいあるか
  • 工程ごとに分けて答えた会社と、六つとも同じ答えだった会社の割合
  • AIを入れている会社が、どの工程に入れているか

開発にAIを使うという話が、委託先から来ました。

速くなるのか、品質はどうなるのか。聞けば説明は返ってきます。ただ、どの工程で使うのかは、こちらから聞かないと出てきません。

社内から「うちも入れたい」と来たときも、決めることは同じです。入れるか入れないかではなく、どこに入れるかです。

開発にAIを入れているのは、3社に1社

この記事の数字は、すべて2026年2月9日時点のものです。IPAの2025年度ソフトウェア動向調査で、国内企業から362件の回答を集めたものです。単純集計のグラフと、回答そのもののCSVが公開されています(2025年度ソフトウェア動向調査、概要および調査結果)。以下はユーザー企業とユーザー系情報システム子会社の255件で、IPAが単純集計で使っている区分と同じです。開発を請け負う側の回答は、分けて数えています。

AIをめぐる数字は、半年で大きく動きます。それでもこの調査を選んだのは、回答が一件ずつ公開されているためです。集計された割合では、工程ごとの多い少ないまでしか分かりません。一件ずつあれば、同じ会社が六つの工程にどう答えたかを数えられます。この記事で見るのは、割合ではなく答え方のほうです。

この調査は、開発の六つの工程それぞれについて、AIの導入状況を尋ねています。システム企画・要求定義、要件定義、システム設計、実装、テスト、運用・保守の六つです。答えは「全社レベルで導入済み」「一部の部門・プロジェクトで導入済み」「検討中」「予定なし」「わからない」から選びます(同調査、Q11-3の選択肢)

六つのうち一つ以上に「導入済み」と答えたのは、89社でした。34.9%です(同調査、Q11-3を255社で集計)。開発を請け負う側では107社のうち74社、69.2%です(同調査、Q11-3をベンダー企業107社で集計)この「一つ以上」という数え方は、工程ごとの割合からは出せません。一件ずつの回答を横に見て数えたものです。

工程ごとの導入済みの割合は、次のとおりです(同調査、Q11-3を255社で集計)

  • 実装 29.4%
  • システム企画・要求定義 23.9%
  • テスト 22.7%
  • システム設計 21.2%
  • 要件定義 20.8%
  • 運用・保守 19.2%

この記事の「導入済み」は、「全社レベルで導入済み」と「一部の部門・プロジェクトで導入済み」を合わせたものです。割合は合わせた後に丸めています。選択肢ごとに丸めた値を足すと、0.1ポイントずれることがあります(同調査、単純集計グラフの留意事項)

どの工程も、3割に届いていません。

七割が、六つの工程に同じ答えを付けている

六つの工程に、AIの導入状況をどう答えたか ユーザー企業255社を、六つの工程への答え方で三つに分けた。六つとも同じ答えを付けた会社が179社で70.2%。工程を選んで入れている会社、つまり一つ以上五つ以下の工程に導入済みと答えた会社が54社で21.2%。工程によって答えが違うが、まだどの工程にも入れていない会社が22社で8.6%。棒の長さは割合を表す。 六つの工程に、AIの導入状況をどう答えたか(ユーザー企業255社) 六つとも同じ答え 179社 70.2% 工程を選んで入れている 54社 21.2% 答えは違うが、まだ入れていない 22社 8.6% 六つに同じ答えを付けている会社が、七割

六つの工程すべてに同じ答えを付けた会社は、179社ありました。70.2%です(同調査、Q11-3を255社で集計)。内訳です。

  • 六つとも「予定なし」 74社(29.0%
  • 六つとも「検討中」 41社(16.1%)
  • 六つとも「導入済み」 35社(13.7%)
  • 六つとも「わからない」 29社(11.4%

ここは読み方に幅があります。六つとも「予定なし」なのは、本当にどの工程にも予定がないだけかもしれません。六つを見たうえでどれも見送ったのなら、それも分けて決めた結果です。

ただ、六つとも「わからない」の29社は、見送ったとは言えません。工程ごとに違う答えが出るところまで、話が進んでいない状態だと読めます。

開発を請け負う側では、形が違います。六つとも「予定なし」は107社のうち5社、4.7%です(同調査、Q11-3をベンダー企業107社で集計)。かわりに六つとも「導入済み」が30.8%あります。

AIを入れている会社は、工程を選んでいる

AIを一つ以上の工程に入れている89社を見ます。そのうち六つ全部ではないのが54社で、60.7%です(同調査、Q11-3を89社で集計)AIを入れている会社の6割が、工程を選んでいます。

その89社を母数にすると、工程ごとの割合はこうなります(同調査、Q11-3を89社で集計)

  • 実装 84.3%
  • システム企画・要求定義 68.5%
  • テスト 65.2%
  • システム設計 60.7%
  • 要件定義 59.6%
  • 運用・保守 55.1%

実装だけが飛び出ています。残る五つは55.1%から68.5%の間に固まっていて、そのなかでいちばん低いのが運用・保守です(同調査、Q11-3を89社で集計)

開発を請け負う側でも、順序は同じでした。AIを入れている74社のうち、実装が95.9%、運用・保守が58.1%です(同調査、Q11-3をベンダー企業74社で集計)発注する側でも請け負う側でも、いちばん多いのは実装で、いちばん少ないのが運用・保守です。

決められるのは、試す工程と、人の関わり方

ここからは当社の見立てです。

開発向けのAIは、コードを書くところを軸に作られてきました。補完、生成、書いたものの説明。実装は、道具の側が先に揃った工程です。

運用・保守は、そこから遅れています。動いているものを見て直す道具は、コードを書く道具より後から出てきました。

もう一つあります。運用・保守には、止まったときの責任がついてきます。実装で間違えれば直せますが、動いているものを止めれば、その間の分は戻りません。道具の出来とは別に、任せていいと思えるかどうかの判断が入ります。

この二つは、こちらでは決められません。道具がどの工程から揃うかも、任せていいと思えるかも、時間で動きます。この調査の回答は2026年2月時点なので、道具の側はそのあとも動いています。

決められるのは、二つです。どの工程で試すか。そしてその工程で、人がどこまで関わるか。書いたものを人が見るのか、動かす前に人が承認するのか、止まったときに人が入るのか。ここを決めていないと、運用・保守は試すところまで進みません。

明日からできること

委託先から出ている話でも、社内から出ている話でも構いません。いま出ているAIの使い方を、六つの工程のどれか一つに置いてみます。システム企画・要求定義、要件定義、システム設計、実装、テスト、運用・保守。どれにも置けないなら、まだ工程の話になっていません。

置けたら、その工程だけについて決めます。入れるか入れないかを会社ごとに決めるのではなく、工程ごとに決める形です。

運用・保守を後ろに回すなら、回す理由を一行書きます。人がどこまで関わる形にするかが、まだ決まっていないから。理由が書けていれば、決まったときに前へ出せます。