この記事で分かること

  • レガシーシステムが残っている割合と、DX推進に対する足かせだと答えた割合
  • 刷新が止まる理由として挙げられているもの
  • 多かった二つが、誰の判断で動くか

古いシステムを作り替えたいという話は、何年も前から出ています。

そして毎年、来年に回ります。止まっている理由を、自分の理解不足だと思っていないでしょうか。

レガシーシステムが残っているのは、10社に8社

IPAが2025年度のソフトウェア動向調査で、回答362社の内訳を1件ずつ公開しています。このうちユーザー企業は247社です(IPA、2025年度ソフトウェア動向調査の回答データ、Q1-4を当社が集計)。ここから先はこの247社の数字です。

レガシーシステムがあると答えたのは195社、78.9%でした。ほとんどがレガシーシステムだと答えたのが22社、半分程度が56社、一部領域に残っているが117社です(同調査、Q5-1を247社で集計)

影響のほうは、答えが分かれています(同調査、Q5-2を247社で集計)

  • DX推進に対する大きな足かせとなっている 26社(10.5%)
  • DX推進に対するやや足かせとなっている 72社(29.1%)
  • 現在DX推進には影響しないが将来足かせになる可能性がある 63社(25.5%)
  • DX推進には影響しない 41社(16.6%)

DX推進に対する足かせだと答えたのは98社。いまは影響していないと答えたのは、将来足かせになる可能性がある63社と、影響しない41社で104社です(同調査、Q5-2を247社で当社が計算)足かせだと答えた98社より多くなっています。

設問のあいだで、回答が揃っていない会社があります。Q5-1で「レガシーシステムはない」と答えた44社のうち、Q5-2でも「保有していない」と答えたのは34社です。残る10社は、9社が「DX推進には影響しない」、1社が「やや足かせとなっている」を選んでいます(同調査、Q5-1とQ5-2を247社で当社がクロス集計)。理由は調査に書かれていません。

多く挙がったのは、経営者ではなかった

刷新の課題を複数回答で聞いています(同調査、Q5-3を247社で集計。複数回答)

レガシーシステム刷新の課題 ユーザー企業247社への複数回答のうち、課題として挙げられた8項目。他の案件に手一杯で十分な要員を割けないが86社で最多、ブラックボックス化によりレガシーシステムの解析が困難が78社、ユーザーの既存システムの操作性へのこだわりを解消できないが68社、レガシーシステムが肥大化し移行の影響度が想定できないが67社、古い技術を理解した技術者の確保ができないが40社、レガシーシステム刷新に長けたプロジェクトリーダーがいないが34社、経営者に移行の困難さが理解されず予算や納期を確保できないが34社、経営者に必要性が理解されないが20社。 レガシーシステム刷新の課題(ユーザー企業247社、複数回答) 他の案件に手一杯で十分な要員を割けない 86 ブラックボックス化によりレガシーシステムの解析が困難 78 ユーザーの既存システムの操作性へのこだわりを解消できない 68 レガシーシステムが肥大化し移行の影響度が想定できない 67 古い技術を理解した技術者の確保ができない 40 レガシーシステム刷新に長けたプロジェクトリーダーがいない 34 経営者に移行の困難さが理解されず予算や納期を確保できない 34 経営者に必要性が理解されない 20 多かった二つは、要員と、中身が分からないこと

いちばん多いのは「他の案件に手一杯で十分な要員を割けない」で86社、34.8%。次が「ブラックボックス化によりレガシーシステムの解析が困難」で78社、31.6%です(同調査、同)

経営者を挙げた選択肢は二つあります。「移行の困難さが理解されず予算や納期を確保できない」が34社、13.8%。「必要性が理解されない」が20社、8.1%です(同調査、同)

複数回答なので、この二つを足すことはできません。同じ会社が両方を選んでいる場合があり、調査は組み合わせを公開していません。

上の図は課題として挙げられた8項目です。このほかに「特になし・保持していない」が66社、26.7%、「その他」が12社、4.9%ありました(同調査、同)4社に1社は、課題を挙げていません。

多かった二つは、経営者が決めないと動かない

「要員を割けない」は、人がいないという話ではありません。他の案件に付いているという話です。付け替えるには、いま動いている案件のどれかを止めることになります。

止める案件を決められるのは、現場ではありません。

「ブラックボックス化で解析が困難」も同じ形です。解析には人と時間がかかり、その分の費用は刷新の前に出ることになります。作り替える前の調査に払うかどうかは、予算の話です。

解析が難しいのは、中身だけではありません。IT資産をどう管理しているかを聞いた設問では、表計算ソフトや紙台帳などの簡易的な方法が89社、36.0%。管理は行っていないと答えたのが21社、8.5%でした(同調査、Q10-1を247社で集計)

合わせて110社、44.5%が、何があるかの一覧を表計算ソフトか紙で持っているか、把握できていません(同調査、Q10-1を247社で当社が集計)。解析の前に、数える作業が入ります。

つまり経営者の理解不足は、理由に挙がっていません。それでも多かった二つは、経営者が決めないと動きません。

動かすのに要るのは、理解ではなく、優先順位と金額です。どの案件を止めるかが優先順位で、解析にいくら出すかが金額です。

明日からできること

聞くことは一つです。

いま止まっている刷新は、どの案件を止めれば動くのか。

「人が足りない」と返ってきたら、聞き方を変えます。他の案件に付いているのか、それとも古い技術が分かる人がいないのか。この調査では、他の案件に手一杯が86社、古い技術を理解した技術者の確保ができないが40社でした(同調査、Q5-3を247社で集計。複数回答)

他の案件に付いているだけなら、止める案件を決めれば動きます。

そして解析にいくらまで出すかを、刷新の予算とは別に決めます。中身が分からないままでは、移行の影響も、いつ終わるかも出てきません。

どちらも、経営者が決めるまで止まったままです。この調査で経営者があまり挙がっていないのは、理解していないからではなく、決めることが理解とは別だからです。