この記事で分かること
- 設備投資のうちソフトウェアに回っている割合
- 増えている情報処理・通信費の中身
- デジタル化がどの段階で止まっているか
ITにいくら使っているかを聞かれたとします。すぐ答えられる数字が、社内のどこかにあるでしょうか。
設備投資に占めるソフトウェアは7.9%
中小企業庁が2026年版の中小企業白書・小規模企業白書を2026年4月24日に閣議決定しています。参考資料にデジタル化の節があります(概要)。
設備投資額に占めるソフトウェア投資額の割合が出ています。大企業が12.9%、中小企業が7.9%。財務省の法人企業統計調査季報によるもので、2025年第4四半期までの後方4四半期移動平均です(概要)。
中小企業は資本金1千万円以上1億円未満、大企業は資本金10億円以上として集計されています。金融業と保険業は含みません。
一人当たりの情報処理・通信費は10年で5割増
同じ節に、従業者一人当たりの情報処理・通信費の推移も載っています。2014年度を100として、2023年度は大企業が162.1、中小企業が148.0(概要)。
ここでいう情報処理・通信費には、リース・レンタル料、保守料、回線使用料、ソフトウェアの委託料と購買費、オンラインサービス料などが含まれます(概要)。
費用は10年で5割近く増えているのに、設備投資に占めるソフトウェアの割合は大企業の6割ほどにとどまります。この二つは矛盾しません。増えている場所が、設備投資の外にあるからです。
増えた分の三割近くはクラウドの使用料
白書は増加の内訳も出しています。2019年以降で最も金額が増加しているものを聞いたところ、ソフトウェア購買費が32.2%、クラウドサービス使用料が28.6%、リース・レンタル料が20.3%、保守料が12.9%(概要)。
白書はこれを、資産に計上されないクラウドサービスの活用が中小企業でも進んでいる、と書いています(概要)。
毎月の使用料は費用として出ていきますが、設備投資の数字には乗りません。いくら使っているかを設備投資の欄で見ると、実際より小さく見えます。
六割弱はツールを入れた段階にいる
取り組みの段階も四つに分けられています。段階1が紙や口頭による業務が中心でデジタル化が図られていない状態、段階2がアナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態、段階3がデジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態、段階4がデジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態です(概要)。
分布はこうなっています。段階2が57.3%、段階3が24.5%、段階1が15.4%、段階4が2.8%(概要)。
費用は増え、ツールは入っている。そのうえで、六割近くが移行した状態のところに留まっています。
三つの数字は別の場所にある
ここまでに出てきた数字は三つです。設備投資に占めるソフトウェアの割合、従業者一人当たりの情報処理・通信費、デジタル化の取り組み段階。白書はこの三つを、それぞれ別の図で出しています。互いを結びつける記述はありません。
見ている場所も違います。一つ目は決算に出る数字、二つ目は毎月出ていく費用、三つ目は現場の状態です。費用が増えたから段階が上がる、とは書かれていません。
裏を返すと、払っている額だけを見ても、段階が上がるかどうかは分からないということです。増やすか止めるかを決めるには、三つを同じ表に置く必要があります。
明日からできること
自社で見るのは、設備投資の欄ではありません。毎月の費用として出ていっている分も含めた、ITの総額です。
まず、直近12か月で出ていったIT関連の支払いを四つに分けます。ソフトウェアの購入、クラウドの使用料、リース・レンタル、保守。白書の分け方をそのまま使えます。
次に、クラウドの使用料を契約ごとに書き出します。毎月引き落とされているものは、決裁を通さずに増えていることがあります。使っていないものが混ざっていれば、そこが最初に止められる分です。
最後に、四つの合計を段階と突き合わせます。段階2は、ツールに移行したところまでの状態です。払っている額に対して段階が上がっていなければ、次に足すのはツールではありません。
設備投資に占めるソフトウェアの割合は、大企業の6割ほどでした。差が付いているのは金額そのものより、何に使ったかが見える形になっているかです。