この記事で分かること
- 情報通信業の人手不足感が12産業全体と比べてどこにあるか
- 足りないときに各社が何をしているか
- 情報通信業だけ割合が違う打ち手はどれか
人が足りないという話になったとき、募集の相談以外にどんな手が挙がるでしょうか。
情報通信業の不足感は12産業全体より高い
厚生労働省が労働経済動向調査の令和8年5月分を公表しています。令和8年5月1日現在の状況を、30人以上の常用労働者を雇用する事業所に聞いたものです。5,786事業所のうち3,174から有効な回答を得ており、有効回答率は54.9%(概況)。
対象は建設業から医療・福祉までの12産業です。情報通信業もその一つに入っています。12産業を合わせた値を、原典は調査産業計と呼んでいます。以下ではこれを12産業全体と書きます。
正社員等について、人が不足していると答えた事業所の割合から、過剰と答えた事業所の割合を減じた値が出ています。原典はこれを労働者過不足判断D.I.と呼びます。D.I.は変化の方向を表す指標のことで、プラスであれば人手不足と感じている事業所のほうが多いことを示します。12産業全体は+47ポイント、情報通信業は+54ポイント(概況)。
情報通信業の推移も出ています。令和7年11月が+58、令和8年2月が+62、そして5月が+54。2月から8ポイント下がっていますが、12産業全体より7ポイント高い位置にあります。
パートタイム労働者では向きが変わります。12産業全体が+27に対して、情報通信業は+10。12産業の中では低いほうで、建設業の+6、学術研究・専門技術サービス業の+9に次ぎます。
足りない部門に何かをした事業所は63%
同じ調査に、労働者が不足している部門等への対応状況があります。令和7年8月調査から共通項目に入ったものです。
令和8年1〜3月期の実績で、何らかの対応をした事業所の割合は12産業全体で63%。対応した事業所の内訳では、中途採用の開始・拡大・強化が69%で最も多く、次いで新規学卒者の採用、臨時・パートタイム労働者の採用、業務の効率化の推進がいずれも39%と続きます。新規学卒者は原典の言い方で、新卒のことです(概況)。
情報通信業は中途採用が81%
産業別に見ると、情報通信業だけ割合が離れる項目があります。
中途採用の開始・拡大・強化が81%。12産業全体の69%より12ポイント高く、12産業の中では学術研究・専門技術サービス業の83%に次ぐ高さです。建設業と並びます。新卒の採用も45%で、12産業全体の39%を上回ります(概況)。
逆に低いのが臨時・パートタイム労働者の採用で12%。12産業全体は39%です。パートタイムの不足感が+10と低いことと、同じ方向を向いています。
採用以外の手は賃金より仕組みに向いている
採用以外の項目を見ると、並びが逆になります。
在職者の労働条件の改善(賃金)は17%で、12産業全体の21%を下回ります。教育訓練・能力開発による業務可能範囲の拡大は15%で、12産業全体の14%とほぼ同じ(概況)。
一方で高いのが省力化投資の実施で17%。12産業全体は12%です。業務の効率化の推進も44%で、12産業全体の39%を上回ります。
まとめると、情報通信業の打ち手は外から採ることと、仕組みで減らすことに寄っています。いまいる人の賃金を動かす項目だけが、割合で12産業全体を下回っています。
明日からできること
自社で見るのは、募集の出し方ではありません。この半年で打った手が、何種類あったかです。
まず、直近で人が足りなくなった部門を一つ挙げます。そこで実際にやったことを書き出します。中途採用、新卒採用、省力化投資、業務の効率化、賃金、教育訓練。調査の項目をそのまま使えます。
次に、書き出したものが採用だけになっていないかを見ます。情報通信業は中途採用81%に対して、賃金17%、教育訓練15%です。採る手が強い業種なので、放っておくとそこだけになります。
最後に、省力化投資と業務の効率化が入っているかを見ます。どちらも情報通信業のほうが12産業全体より高い項目です。打ち手として先に検討されている、ということでもあります。
不足感は2月の+62から5月の+54へ下がりました。それでも12産業全体より7ポイント高い位置にあります。採用の競争が緩む前提で計画を立てると、打ち手はまた募集だけに戻ります。