この記事で分かること

  • 中小企業に入る人のうち、新卒と中途採用の割合
  • 求職活動で求人企業の自社サイトを使った割合
  • 中小企業を選んだ理由として挙げられているもの

中途採用の募集を出しても、応募が来ません。

求人媒体を変えるか、給与や休日の条件を上げるか。その二つの前に、中小企業に入った人が求職中にどこを見て、入社の理由に何を挙げたかが、公の統計に出ています。

定着している会社が手を入れたのは、賃金と休暇

中小企業庁の2026年版 中小企業白書に、人材の確保と活用を扱った章があります。定着のほうから見ます。この節の数字のもとは、株式会社帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」です。

2019年以降に採用した従業員の定着割合が7割以上だと答えた5,501の事業者に、定着率向上のために取り組んだことを聞いています(2026年版 中小企業白書、第2-3-8図。複数回答)

  • 賃金水準の向上 63.1%
  • 休暇の取得推進 61.1%
  • 時間外労働の削減 45.1%
  • 柔軟な働き方の導入 36.5%
  • 社内コミュニケーションの活性化 35.6%
  • 福利厚生の充実 34.7%
  • 快適なオフィス・工場・店舗等の整備 26.6%
  • キャリア形成の支援(研修制度、資格取得支援等)19.2%
  • キャリアプランの明確化 7.3%

上位は賃金と休暇です。自社のことを外に書いて伝えるという取り組みは、この設問の選択肢に並んでいません。

ただしこれは、入ったあとの話です。入る前に何を見ていたかは、同じ章の別の設問に出ています。

中小企業に入る人の86.9%は、中途採用

白書は厚生労働省の雇用動向調査から、入職者の内訳を出しています(同白書、第2-3-1図。中小企業は常用労働者5〜299人、大企業は300人以上)。区分は三つあります(同白書、第2-3-1図の注2〜4)

  • 新規学卒者(入職前1年間に就業経験がなく、新卒)中小企業13.2% / 大企業21.6%
  • 新規学卒者以外(入職前1年間に就業経験がなく、新卒でない)中小企業18.8% / 大企業18.7%
  • 転職入職者(入職前1年間に就業経験がある)中小企業68.1% / 大企業59.6%

採用の枠で見ると、新卒枠に当たるのは新規学卒者だけです。残る二つを合わせた86.9%は、中途採用の枠から入ってきます。大企業も78.3%です(同白書、第2-3-1図の割合を当社が合計)。原典は「中途採用」という区分を持っていないので、この合計は当社の読み替えです。

新規学卒者は高校、大学・大学院、その他の3列を合計したものです。原典の各列は丸めのため、合計が中小企業100.1%、大企業99.9%になります。そのため100から差し引くのではなく、部分の和を使っています(同白書、第2-3-1図)

大半が中途採用なのは、規模に関わらず同じです。それでも中小企業のほうが8.6ポイント高く、新規学卒者のうち大学・大学院は中小企業3.3%、大企業9.5%です(同白書、第2-3-1図)

新卒向けの説明会や大学との関係づくりは、新規学卒者の13.2%に向けた手です。中途採用で入ってくる86.9%は、説明会にも大学にもいません(同白書、第2-3-1図の割合を当社が合計)

入った人が見ていた場所

同じ雇用動向調査で、入職者が求職活動でインターネットをどう使ったかを聞いています(同白書、第2-3-4図。複数回答)この設問は入職者全体が対象で、中途採用で入った人だけの内訳ではありません。入職経路が出向、出向先からの復帰、縁故の人は除かれています(同白書、第2-3-4図の注2)

求人企業の自社サイトを使った割合(年代別) 中小企業への入職者が求職活動で、求人企業の自社サイト(原典の選択肢名は「求人企業が直接運営するサイト」)を使った割合。20歳代24.2%、30歳代27.0%、40歳代25.4%、50歳代16.1%、60歳代以上8.6%。20歳代から40歳代はおよそ四人に一人で、50歳代以上は下がる。 求人企業の自社サイトを使った割合(年代別、複数回答) 20歳代 24.2% 30歳代 27.0% 40歳代 25.4% 50歳代 16.1% 60歳代以上 8.6% 20歳代から40歳代は、およそ四人に一人

選択肢の名前は「求人企業が直接運営するサイト」です。以下、求人企業の自社サイトと書きます。20歳代24.2%、30歳代27.0%、40歳代25.4%。50歳代は16.1%、60歳代以上は8.6%と下がります(同白書、第2-3-4図)

他の経路も同じ設問に出ています(同白書、第2-3-4図)

  • 民間等の求人広告会社のサイト 20歳代37.6% / 30歳代37.1% / 40歳代35.8%
  • ハローワークインターネットサービス 20歳代35.6% / 30歳代39.1% / 40歳代43.1%
  • インターネットは利用しなかった 20歳代23.7% / 30歳代21.9% / 40歳代24.9%

複数回答なので、これらを足すことはできません。言えるのは、求人媒体のほうが多く見られていて、そのうえで求人企業の自社サイトも見られている、ということです。

理由として挙がっているのは、仕事の内容

白書は、中小企業に入った理由も出しています。前職の企業規模で分けて、2014年と2023年を並べています(同白書、第2-3-3図。前職の大企業は従業員300人以上、中小企業は299人以下)。大企業から中小企業に移った人では、こう動いています。

  • 仕事の内容に興味があった 20.8% → 34.5%
  • 労働時間、休日等の労働条件が良い 22.4% → 18.3%
  • 能力・個性・資格が生かせる 16.7% → 17.5%
  • とにかく仕事に就きたかった 19.1% → 10.7%
  • 給料等収入が多い 6.0% → 7.1%

中小企業から中小企業でも、仕事の内容に興味があったが23.2%から27.9%に上がり、とにかく仕事に就きたかったが19.3%から14.4%に下がっています(同白書、第2-3-3図)

2023年でいちばん多いのは、どちらも「仕事の内容に興味があった」です。

この理由と、上の定着の数字を引き算することはできません。定着の取り組みを答えたのは事業者、入った理由を答えたのは入職者です。調査も設問も違い、同じ会社の中の食い違いを示すものではありません。

並べて言えるのはここまでです。会社が手を入れたのは賃金と休暇で、入った人が挙げた理由の一番は仕事の内容だった、ということです。

業種で変わるところ

ここまでの数字は、業種を問わない全体のものです。開発の仕事に限った内訳は、白書にありません。店舗の接客と、社内のシステムを作る仕事とで、見られる場所も決め手も同じとは限りません。

ここからは当社の見立てです。開発の仕事は、外から見えにくいと考えています。消費者向けの製品なら、求職者も自分で使って中身を知れます。ただ、企業向けの仕組みや、社内だけで使うシステムは、外の人が触れません。そして開発の仕事の大半は、この触れられないほうです。何をどう作っているかは、書かないと外に出ません。

明日からできること

見るところは、自社サイトの一箇所です。

いま自社のサイトに、どんな仕事をしているかが書いてあるか。

載っているのが事業内容と募集要項だけなら、書いてあるのは条件です。いちばん多かった理由は「仕事の内容に興味があった」で、条件ではありませんでした。

書く材料は社内にあります。いま動いている案件、使っている道具、直近で直したもの、何をどう決めているか。これは広報の文章を作る作業ではなく、いまやっていることを言葉にする作業です。

そして、募集を出したあとに書いても、そのときに転職先を探している人には間に合いません。30歳代では27.0%が、求人企業の自社サイトを見ています(同白書、第2-3-4図)自社サイトを読める状態にしておく時期は、募集を出すより前になります。