この記事で分かること

  • 個人に業務委託で頼む募集に、何を書くことになっているか
  • 媒体や仲介の会社に任せた場合、誰に義務が残るか
  • 報酬の額を確定できないとき、どう書けばよいか

エンジニアを業務委託で探しているとします。媒体にも出し、SNSでも声をかけたでしょう。その募集に何を書くかは、こちらで決めていたはずです。

個人に業務委託で頼むときの募集にも決まりがある

フリーランス・事業者間取引適正化等法は、令和6年11月1日に施行されました。取引の適正化に関する部分は公正取引委員会と中小企業庁が、就業環境の整備に関する部分は厚生労働省が執行を担います(同案内ページ)。

募集の決まりは、就業環境の整備に入っています。第12条の募集情報の的確表示義務です(同案内ページ)。

相談や申出の受け先も分かれています。取引の適正化に関する部分は公正取引委員会と中小企業庁、就業環境の整備に関する部分は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。

この義務を負うのは「特定業務委託事業者」です。従業員を使用する事業者、または二以上の役員がいる法人が当たります。募集する相手は、従業員を使用しない個人や法人です(同案内ページ)。

特定業務委託事業者にこの義務が生じるのは、広告等により募集情報を提供するときです。新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出または頒布、そのほか厚生労働省令で定める方法が「広告等」に当たります(同通達)。

求められているのは二つです。虚偽の表示をしないことと、誤解を生じさせる表示をしないこと。

六つのうち一つでも欠けると、違反になる

的確表示の対象となる募集情報の内容は、令和6年厚生労働省告示第212号の指針に示されています。そのうえで厚生労働省は、令和6年12月18日付の通達で、第12条第1項の解釈を示しました(同通達)。

誤解を生じさせる表示にならないために、募集情報に含める六つ 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第12条第1項で求めている内容について(厚生労働省、令和6年12月18日)の第1から、当社が抜き出したもの。募集を行う者の氏名または名称、住所(所在地)、連絡先、業務の内容、業務に従事する場所、報酬の六つ。報酬は、令和7年度の指導等事例で目安の書き方が示されている。 誤解を生じさせる表示にならないために、募集情報に含める六つ 募集を行う者の氏名または名称 住所(所在地) 連絡先 業務の内容 業務に従事する場所 報酬

原文はこうです。「募集情報が本法第12条第1項における誤解を生じさせる表示とならないと認められるためには、当該募集情報の中に、特定受託事業者の募集を行う者の氏名又は名称、住所(所在地)、連絡先、業務の内容、業務に従事する場所及び報酬…を含める必要があること」(同通達)。

この解釈が出た背景も書かれています。インターネット等で犯罪実行者を募集する事案が見られ、その中に通常の募集情報と誤解を生じさせるような広告等も見受けられる状況が発生したためです。

六つのうち一つでも欠けていれば、それだけで第12条の違反に当たります(同案内ページ)。中身を正しく書いていても、それだけでは足りません。

労働者を募集する広告にも、同じ六つの表示が必要とされています。

媒体に任せても、依頼した会社に義務が残る

第12条の義務を負うのは、特定業務委託事業者です。募集を自社で出さず、他の事業者に委託する場合があります。通達はそこも書いています(同通達)。

実態として特定業務委託事業者に当たらない他の事業者を、通達は「仲介事業者」と呼びます。その仲介事業者に対して、氏名・名称等が掲載されるよう依頼する必要があります(同通達)。

例外が一つ置かれています。仲介事業者が、応募しようとする人から照会を受けたときに六つを回答することとし、その旨と照会先を募集情報とともに示す場合です。このときは、六つが示されていないことだけをもって誤解を生じさせるものにはなりません。

通達が求めているのは、特定業務委託事業者が依頼することです。任せた先が載せてくれるかどうかは、そこに含まれていません。

裏を返すと、その仕組みを用意しないまま媒体に任せた場合、依頼した会社が第12条に触れます(同通達)。

この通達の宛先は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)長です。あわせて、リーフレットを使って発注する会社へ周知するようにも書かれています。

令和7年度の指導事例に、IT開発の募集が入っている

都道府県労働局が令和7年度に行った指導等の事例が、10件公表されています。うち3件が第12条の関係です(同指導等事例)。

一つは、IT開発のテスト作業等の業務を委託する募集です。クラウドソーシングサービスのプラットフォームに掲載していました。掲載の内容が「フリーランスの募集と労働者の募集のどちらであるか判然としない」状態で、表示を改めるよう助言されています(同指導等事例)。

もう一つは、複数の媒体に募集情報を掲載していて、報酬額を変更したのに一部へ反映されていなかった事例です。募集内容に変更があった場合は最新のものに更新するよう助言されています。

残る7件は第14条(ハラスメント対策に係る体制整備)と第16条(中途解除等の予告・理由開示)です。そのうち2件も、ソフトウェアの開発やプログラミングの委託でした(同指導等事例)。

第14条の事例には、従業員に対するハラスメント対策の規定と相談窓口は整備していたものの、業務委託におけるハラスメント対策の規定と相談窓口は整備していなかった会社が出てきます。経理業務を委託していた例です(同指導等事例)。

第16条の事例では、ソフトウェアの開発・運用・提供を委託していた会社が、契約を解除する30日前までに予告せず、解除の理由も口頭で説明していました。予告と理由の開示は、書面や電子メール等で行うことになります(同指導等事例)。

相談の件数も出ています。令和7年度に都道府県労働局が受けた相談は1,895件で、募集情報の的確表示に関するものは106件、3.9%です。いちばん多いのはハラスメント対策の471件、17.5%です(同施行状況)。

令和6年度は、施行された11月1日から3月31日までの5か月で1,301件でした。募集情報の的確表示に関するものは112件、6.2%です。1回の相談が複数の内容にまたがるときは、それぞれに数えられています(同施行状況)。

報酬は、目安の書き方が示されている

六つのうち、書きにくいのが報酬です。募集の段階で額を確定できないという理由で、報酬を記載していなかった事例があります。認証審査業務の一部を委託するために募集していた会社です(同指導等事例)。

厚生労働省は、書き方の例を示しています。「1件1,500円〜」「報酬40万〜(要相談)」といった形。過去の発注実績等を参考にして目安の金額等を記載することも考えられるとしています(同指導等事例)。

確定した額でなくてよい、ということです。書かないことが、違反に当たります。

書いたあとも、募集情報を正確かつ最新の内容に保つことが求められます。報酬を変えたなら、出している先すべてで直すところまでが第12条の範囲です(同指導等事例)。

明日からできること

決めるのは、いま出している募集に何を載せるかです。

まず、出している募集を全部書き出します。自社サイト、媒体、クラウドソーシング、SNS。載せた場所ごとに、六つが揃っているかを見ます。

次に、他の事業者に任せているものを分けます。任せている先には、六つが掲載されるよう依頼する必要があります。照会に回答する形にしているなら、その旨と照会先が募集情報に付いているかを確かめます。

最後に、報酬を書きます。額を確定できないなら、目安の金額で構いません。過去の発注実績が使えます。

六つのうち、氏名または名称、住所、連絡先は会社の情報です。書き足すだけで済みます。

条件を変えたときに、どこを直すかも決めておきます。複数の媒体に出していると、一部だけ古いまま残ります。

募集の文面は、来てほしい人が最初に読むものです。六つを書いても、選ばれる理由にはなりません。そこから先を書けているかは、別に確かめることになります。