この記事で分かること

  • 教育訓練にかける費用と、そのための時間を作る制度が、それぞれどう動いたか
  • 会社が用意する場と、働く人が自分で使う時間は、増えているのか
  • 学ぶ場を業務の外に作れないとき、どこで渡すことになるか

期初に、研修の予算を取りました。

夏になっても、使えていません。足りないのは費用ではなく、受けさせたい担当者の時間です。

案件が重なっています。抜けると、誰かが引き取ることになる。来月にしよう、と決めます。その来月が、もう三回来ています。

社内で先輩が教える形にしても、同じです。教える側の時間も、空いていません。

費用は増え、時間を作る制度は減った

厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度の能力開発基本調査に、この二つが並んでいます。まず、費用のほうです(企業調査)

  • 教育訓練費用を支出した企業 54.4%(前回より0.5ポイント低下)
  • OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額 2.0万円(前回より0.5万円増加)

次に、時間のほうです。三つの制度が挙がっていて、いずれも減っています(企業調査)

  • 教育訓練休暇制度 5.7%(前回より1.8ポイント低下)
  • 教育訓練短時間勤務制度 4.7%(前回より1.5ポイント低下)
  • 教育訓練所定外労働時間免除制度 4.6%(前回より1.5ポイント低下)

はっきり上を向いているのは、一人当たりの費用です。教育訓練費用を支出した企業の割合は0.5ポイント下がっているので、出す会社が増えたわけではありません。出している会社が、一人当たりに多く出したという形です(企業調査)

調査の対象は、常用労働者30人以上の企業7,452社と事業所7,194か所、そこに属する労働者20,127人です。有効回答率は順に52.6%、54.2%、43.9%(調査概要)令和7年10月1日時点の状況を尋ねたものです(調査時期)

足りていないと答えながら、場は変わっていない

制度が減ったのは、要らなくなったからではありません。能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所は、80.1%です(事業所調査)。前回より0.2ポイント上がっています。

実際に行われたかどうかも、同じ調査で聞いています(事業所調査、個人調査)

  • 計画的なOJTを正社員に実施した事業所 60.6%(前回より0.5ポイント低下)
  • OFF-JTを受講した労働者 37.3%(前回より0.3ポイント上昇)
  • 自己啓発を実施した労働者 35.5%(前回より1.3ポイント低下)

用意する側も、受ける側も、ほぼ横ばいです。上がったのはOFF-JTを受講した労働者の0.3ポイントだけで、あとの二つは下がっています(事業所調査、個人調査)

学ぶ場を、業務の外に作れないなら

学ぶ場を、どこに置くか 学ぶ場の置き方は二つあり、渡るものが違う。業務の外に作る形は、社外の講座や社内の勉強会で、まとまった時間を新しく空けることになる。ここで渡るのは知識である。業務の中に置く形は、技術の判断をする場に覚えてほしい人も入れるもので、場は元からある。ここで渡るのは、現場の判断である。 業務の外に作る 社外の講座、社内の勉強会 まとまった時間を、新しく空ける 渡るのは、知識 業務の中に置く 判断の場に、覚える人も入れる 場は、元からある 渡るのは、現場の判断

学ぶ場を業務の外に作るには、まとまった時間を新しく空けることになります。その時間を作る制度を持つ会社は5%前後で、しかも減っています。

もう一つの置き方があります。技術の判断をする場に、覚えてほしい人も入れることです。判断は、研修と違って毎月起きています。場は、元からそこにあります。

ただし、渡るものが違います。業務の外で渡るのは知識です。体系立った型や、自社にない事例。まとまった時間が要るのは、そのためです。

業務の中で渡るのは、現場の判断です。なぜその案にしたか、何を捨てたか、次に同じ場面で何を見るか。

片方がもう片方の代わりになるわけではありません。ただ、時間を新しく空けられないなら、先に動かせるのは中のほうです。

その場合も、入れただけでは残りません。答えは、その案件にしか使えないためです。理由まで渡らないと、次に別の案件が来たときに、また同じことを聞くことになります。

もう一つ、最後は本人が決める形にしていきます。はじめから決めさせる必要はありません。決まっていく場を見て、理由を聞くところからで構いません。

ただ、材料を出す人が決め続けているうちは、決めた経験がその人の側にしか溜まりません。材料を出すのが社内の先輩でも、外から来た人でも、ここは同じです。

明日からできること

この一か月で決めた技術的な判断を、一つ思い出します。使う道具を選んだ、作り方を決めた、見積もりを受けるかどうかを決めた。どれでも構いません。

その場に、覚えてほしい人はいたでしょうか。いなかったなら、次の同じような判断のときに呼びます。毎回でなくて構いません。

そして、決めた理由を伝えます。なぜその案にしたか、何を捨てたか、そのとき何に縛られていたか。口頭でも、書いたものでも構いません。伝えないままだと、残るのは答えだけです。