この記事で分かること

  • デジタル化を始めた会社で、それを主導する人が在籍している割合
  • 同じ調査で、他の3か国はどう並んでいるか
  • 五つの役割のうち、採用で埋まるものと埋まらないもの

開発の話が前に進まないとき、出てくるのは人の話です。エンジニアを採る。委託先を増やす。

ところが人が増えても、何を作るかが決まらない案件は、決まらないままです。総務省の調査に、その形が数字で出ています。

この記事で扱う範囲

令和8年版情報通信白書に、企業向けのアンケートの結果が載っています。日本、米国、ドイツ、中国の4か国が対象です(総務省、令和8年版情報通信白書、第Ⅱ部第1章第11節)

答えているのは、すでにデジタル化を始めた会社です。調査の対象は、従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取り組みを開始した企業に勤める、会社全体の戦略が分かる管理職以上の人に限られています。インターネットでの調査で、時期は2026年1月から2月です(同、付注)

日本から答えたのは515社で、うち大企業が353社、中小企業が162社です。中小企業の線は業種で違い、情報通信業や製造業などは従業員300人未満、卸売業・小売業とサービス業などは100人未満です(同、付注)

始めていない会社は、この調査に入っていません。同じ節の別の集計では、デジタル化に関連する取り組みを未実施と答えた日本の企業が約50%で、中小企業では約70%です(同、図表Ⅱ-1-11-18)。以下の割合は、始めた側の会社の数字です。

なお、在籍状況の図には母数が書かれていません。上の回答数と同じとは限りません。

五つの役割で、在籍している割合が違う

白書は、五つの役割について「在籍している」と答えた割合を並べています(同、図表Ⅱ-1-11-21)。日本の数字です。

五つの役割で「在籍している」と答えた割合(日本) 令和8年版情報通信白書の企業向けアンケートで、日本の企業が五つの役割について「在籍している」と答えた割合。デジタルシステムの実装に精通した者が56.1%、ビジネスのデジタル化に精通した企画・立案者が46.2%、CIOやCDOなどのデジタル化の主導者が35.9%、AI・データ解析の専門家が26.4%、UI・UXに係るデザイナーが23.7%。 五つの役割で「在籍している」と答えた割合(日本) 実装に精通した者 56.1% 企画・立案者 46.2% CIOやCDOなどの主導者 35.9% AI・データ解析の専門家 26.4% UI・UXのデザイナー 23.7% 実装できる人がいる会社のほうが、主導する人がいる会社より20.2ポイント多い

いちばん高いのは、システムを実装できる人で56.1%です。次が、事業の側でデジタル化の企画を立てられる人で46.2%。CIOやCDOのようにデジタル化を主導する立場の人がいる会社は、35.9%です(同)

下の二つはさらに低く、AI・データ解析の専門家が26.4%、UI・UXのデザイナーが23.7%です。白書はこの二つを、他国と比べて少ない点として名指ししています。他の3か国では、デザイナーが約7割、AI・データ解析が75%程度です(同、第Ⅱ部第1章第11節の本文)

これが日本の並びです。作れる人がいる会社のほうが、決める人がいる会社より20.2ポイント多い(同、56.1%と35.9%の差)

他の3か国では、この差が開いていない

同じ図に、他の3か国の数字も並んでいます。主導する立場の人が在籍している割合は、3か国とも8割台です(同、図表Ⅱ-1-11-21)

実装できる人との差を国ごとに見ると、2か国は主導する人のほうが多く、差は4.5ポイントと13.2ポイントです。残る1か国は実装できる人のほうが多いものの、その差は2.9ポイントです(同、図表Ⅱ-1-11-21の値の差)

日本の差は、向きも大きさも他の3か国と違います。他国では、作れる状態と決められる状態がほぼ並んで立っています。

課題の一位は人材不足。二位と三位は人数の話ではない

同じ調査は、デジタル化の課題や障壁も聞いています。日本でいちばん多かったのは「人材不足」で39.4%でした(同、図表Ⅱ-1-11-20)

次に多かったのは、「明確な目的・目標が定まっていない」が29.5%、「DXの役割分担や範囲が不明確」が26.0%、「アナログな文化・価値観が定着している」が23.9%です(同)

二位と三位は、人数が増えても埋まりません。目的を定めるのも、役割の範囲を決めるのも、決める人の仕事です。一位の「人材不足」に決める人が含まれているかどうかは、この調査からは分かりません。ただ、一位を人の数の話として読むと、二位と三位の説明がつかなくなります。

これまで当社が相談を受けてきた範囲でも、最初に出るのは人の話です。ただ案件の記録を見ると、止まっているのは決めるところです。見積もりが出ているのに承認が進んでいない。仕様を変えたぶんの費用をどちらが持つかが決まっていない。手が足りないのではなく、決める人が決まっていない形です。

自社で作っている会社は46.0%

白書は、システム開発の内製化についても聞いています。日本で自社主導で開発していると答えたのは46.0%で、海外は約80%です(同、第Ⅱ部第1章第11節の本文)。自社主導は、ほぼすべての開発を自社のエンジニアで実施しているものと、主に自社のエンジニアで開発して一部を外部のベンダーに任せているものの合計です(同)

内製化と在籍状況は別の設問なので、同じ会社で両方がどうなっているかは、この調査からは分かりません。

それでも、順番の話は残ります。作れる状態にすることと、決められる状態にすることは、別に進みます。自社のエンジニアで作れるようになっても、何を作るかを決める人は、それだけでは増えません。

明日からできること

見るのは、いま動いている案件です。

五つの役割のうち、どれが埋まっていないかを名前で書きます。実装する人、企画を立てる人、方向を決める人、データを読む人、使う人から見た形を描く人。案件ごとに、それぞれ誰なのかを書き出します。

空欄になった役割ごとに、埋め方が違います。実装は、採用でも委託でも埋まります。企画は事業の側の人です。決める役割は、採用しても、その人に何を任せるかを決める人が別に要ります。

一方で、急がなくてよいこともあります。五つを全部埋める必要はありません。日本の数字では、五つのうち四つが半分を下回っています。全部揃っている会社のほうが少ない状態です。

先に決めるのは一つだけです。いま動いている案件で、方向を決めるのは誰か。そこが空欄なら、人を増やす前にそこから埋めます。