この記事で分かること
- 2026年9月の月間で、発注する会社に何が依頼されているか
- 委託先との協議の場を、どちらから設けることになっているか
- 値上げを受け入れた担当者の評価が、どこで下がりうるか
委託先から、値上げの相談が来ていないでしょうか。窓口に立っているのは、調達の担当者でしょう。受け入れたあとに社内で何が起きるかは、見ていないかもしれません。
9月の月間に、発注する会社への依頼が出た
経済産業大臣名の周知依頼が、2026年8月27日付で出ました。宛先は関係事業者団体の代表者です。中小企業庁は、掲載ページを2026年9月1日に更新しています(中小企業庁)。
原典は冒頭で状況を書いています。「中東情勢の変化による影響もあり、原材料価格・エネルギーコスト等が上昇しているなか、価格転嫁、取引適正化の重要性が一層増しています」(同周知依頼)。
政府は2021年9月から、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」としています(同周知依頼)。
依頼として並んでいるのは、価格交渉と価格転嫁への積極的な対応、労務費の指針の周知と活用、フォローアップ調査への協力、法改正の周知と徹底、そしてパートナーシップ構築宣言への参加です。
届け先も書かれています。「代表者の方から受注側企業と直接関わる担当の方々まで、本要請文の趣旨を周知・徹底いただくよう、特段の御配慮をお願い申し上げます」(同周知依頼)。宛先は代表者で、届け先は担当者までです。
依頼の一つは、担当者の人事評価への配慮
価格交渉への対応と、労務費の指針の活用。この二つの依頼から、発注する会社に向けた記述を抜き出すと、こうなります(同周知依頼)。
このうち一つが、社内の話です。原文はこうです。「調達部門の担当者が、社会的要請である適切な価格転嫁を受け入れることにより、処遇において不利益を被ることがないよう、人事評価の際に配慮すること」(同周知依頼)。
この一文は、価格交渉の進め方を書いたものではありません。社内の人事の話です。
値上げを受け入れても、計画していた予算が増えるわけではありません。増えるのは、実際に払う金額です。調達の担当者が原価の低減を目標として持ったままなら、受け入れた分だけ目標から遠ざかります。
周知依頼は、そこに配慮するよう求めています。人事評価の設計を、担当者本人が変えることはできません。
協議の場は、申し出の前に設ける
二つ目の依頼が、労務費の指針の周知と活用です。この指針は内閣官房と公正取引委員会が作ったもので、2026年1月1日に改定されています(同周知依頼)。
発注する会社への求め方が、具体的です。「受注者側からの申し出がなくとも、定期的に発注者から協議の場を設け、受注側中小企業との価格交渉に応じる」(同周知依頼)。
申し出を待つ形ではありません。場を設けるのは発注する会社で、時期は定期的です。
受注する会社への依頼も並んでいます。積極的に価格交渉を申し出ること、必要に応じて「取引かけこみ寺」やよろず支援拠点の「価格転嫁サポート窓口」を使うこと(同周知依頼)。発注する会社から見ると、相手には相談先があるということです。
同じ依頼に、続きがあります。「当該受注側中小企業に対して、さらにその先の受注企業に対しても、価格交渉・価格転嫁を行うよう促すこと」。促す相手は、一次の委託先です。二次以降の会社と自社が直接やり取りすることまでは、書かれていません(同周知依頼)。
今回から、官公需に特化した調査が加わる
月間の後には、受注側の中小企業を対象にした調査が行われます。時期は9月下旬以降です。対象は30万社で、主要な発注企業を最大3社まで挙げてもらう形です(同周知依頼)。
今回から、もう一つ加わります。原典は「今回の月間から、官公需の取引についてより正確に実態を把握するため、官公需に特化した調査も新たに実施します」と書いています(同周知依頼)。
こちらは国や地方公共団体と取引がある中小企業が対象で、最大15万社、主な発注機関を最大5者まで挙げてもらいます(同周知依頼)。
受注側の中小企業から、発注者との価格交渉や価格転嫁の実態を聴取するヒアリング調査も、あわせて行われます。担当するのは、中小企業庁が平成29年から配置している取引調査員です。原典はその通称で「取引Gメン」と書いています。回答が発注者に知られないよう、匿名性の確保を徹底して集計されます(中小企業庁)。
あわせて、2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法と受託中小企業振興法について、周知と徹底が求められています。中小受託取引適正化法では、従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分が新設されました。資本金だけで対象かどうかを見ていた会社は、そこを確かめ直すことになります。あわせて、対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明または情報の提供をしないことによる一方的な代金決定が、禁止されました。手形払いと、支払期日までに代金相当額を得ることが困難な支払手段も禁止されています(同周知依頼)。
前回の結果は、発注者ごとに公表されている
調査の結果は、発注者ごとの価格交渉と価格転嫁などの取り組みの状況として公表されます(同周知依頼)。
前回は2026年3月の月間でした。フォローアップ調査で10社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注者について、回答企業数と、価格交渉・価格転嫁・支払条件の回答状況が整理され、リストになっています(同周知依頼)。
回答は点数化されています。個別の回答を点数化した総和を回答企業数で割り、その平均値で区分されています。7点以上、4点以上7点未満、0点以上4点未満、そして0点未満。平均が0点を下回る区分が、置かれています(同周知依頼)。
取り組みの状況が芳しくない発注側企業のトップには、受託中小企業振興法に基づいて、事業所管大臣名での指導・助言と勧奨が行われます。調査で得られた情報を使った注意喚起も実施されています。宛先は経営陣です。
明日からできること
決めるのは、値上げを受け入れた担当者を、社内でどう扱うかです。原典が求めているのは配慮であって、扱い方までは書かれていません(同周知依頼)。
まず、調達の担当者が、原価の低減を目標として持っているかを見ます。持っているなら、値上げを受け入れた分だけ目標から遠ざかります。未達として扱われれば、評価は下がります。その目標を本人が立てている場合もあります。ただし、それを承認して達成度を評価するのは上長です。
次に、委託先との協議の場を、いつ持つかを決めます。申し出を待つ形になっているなら、定期的にこちらから設ける形に変えます。原典が求めているのはこちらです。
一次の委託先に、その先の受注企業とも価格交渉と価格転嫁を行うよう促すことも、依頼に入っています。伝える先は、いま取引している委託先です。
発注者リストに載るかどうかは、自社では選べません。受注側の中小企業が、自社を「主要な取引先」として挙げるかで決まります。ただし前回のリストは公開されているので、そこに自社の名前があるかは、いま確かめられます(中小企業庁)。
月間は9月です。原典は「この9月は、2026年度下期の価格改定時期を迎える企業も多く、価格転嫁のための交渉が本格化する、大事な時期となります」と書いています(同周知依頼)。自社の期がどこで替わるかにかかわらず、相手から交渉を持ちかけられる可能性のある時期です。