この記事で分かること
- 発注者を1者ずつ並べたリストが出ていること
- 価格交渉に応じた発注者のうち、値段が動いた割合
- 値段を据え置いたとき、どこを見るか
委託先から「単価を上げたい」と言われました。
話は聞きました。事情も分かります。それで、値段はどうなったか。
交渉のテーブルには、ほとんどの発注者が着いている
この記事の数字は、すべて2025年10月から2026年3月末までの取引についてのものです。中小企業庁の価格交渉促進月間フォローアップ調査で、受注側の中小企業30万社に配って69,625社から回答を得たものです(回収率23.2%)。調査期間は2026年4月20日から6月3日で、発注者を最大3者分まで挙げてもらう形になっています(フォローアップ調査結果1、調査概要)。
答えているのは受注側です。発注側の自己申告ではありません。
そしてこの調査には、発注者を1者ずつ並べたリストが付いています。10社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注側企業557社と、92の国の機関・地方公共団体です(同調査、発注者リスト)。一覧ページには、調査結果の本体が2026年6月26日更新、このリストが2026年8月4日更新と書かれています(同調査の一覧ページ)。このリストは毎回、本体より後から載ります。
リストには、発注者ごとに三つの区分が付いています。価格交渉、価格転嫁、支払条件。受注側の回答を点数化して発注者ごとに平均し、ア(7点以上)、イ(4点以上7点未満)、ウ(0点以上4点未満)、エ(0点未満)に分けたものです(同リスト、別紙1)。
まず価格交渉のほうです。557社のうち415社が「ア」でした。74.5%です(同リストを当社が集計)。話は、ほとんどの発注者が聞いています。
応じた415社のうち、値段が動いたのは120社
そのまま、同じ発注者の価格転嫁のほうを見ます。「ア」だったのは120社。残りの295社は「イ」以下でした。71.1%です(同リストを当社が集計、交渉が「ア」の415社を母数)。
この掛け合わせは、原典には載っていません。リストは発注者ごとに交渉と転嫁を並べていますが、その組み合わせを数えた表はありません。ここは発注者を1者ずつ横に見て数えました。
557社全体でも同じ形です。価格転嫁が「ア」なのは130社、23.3%。一方で「エ」は0社でした(同リストを当社が集計)。点数が0点を割る発注者はいないのに、7点に届く発注者は4社に1社です。
この点数は受注側の回答の平均値です(同リスト、別紙1)。「ア」でも、挙げた全社が同じように答えたわけではありません。
差がはっきり出るのは、国の機関・地方公共団体の92のほうです。交渉が「ア」なのは72.8%で、企業の74.5%とほぼ同じです。ただ価格転嫁が「ア」なのは6.5%、6機関だけでした(同リストを当社が集計)。応じた割合はほとんど同じで、動いた割合だけが3分の1以下になります。
ソフトウェアは、人の値段しか原価がない
ここまでは全業種です。コストの種類ごとに見ると、情報サービス・ソフトウェアは全体と逆の形になります。
全体では、原材料費55.7%に対して労務費50.0%です。原材料のほうが通っています。情報サービス・ソフトウェアでは逆で、原材料費51.3%に対して労務費56.4%でした(同調査結果1、発注企業の業種別)。この業種区分は中小企業庁が使っているものです。
逆になる理由は、原価の中身です。この業種で上がるコストは、ほぼ人の分だけです。原材料がない。
そして労務費を据え置いた場合、委託先に残る手段は限られます。原価のほぼ全部が人の分なので、下げられるのは単価のほうです。同じ金額で続けるなら、単価の低い人に替わっていく形になると読めます。
この調査は、体制が替わったかどうかを聞いていません。ここはコストの中身から読んだところまでです。
1次請けで話がついても、その下では届かない
階層別の数字もあります。1次請け55.2%、2次請け54.2%、3次請け50.2%、4次請け以上45.5%(同調査結果1、階層別の価格転嫁率)。1次請けと4次請け以上の差は、原典の注記で▲9.7ポイントです。
そして4次請け以上では、「全く転嫁できなかった又は減額された」が24.3%あります(同、原典が本文で挙げている値)。
発注する側から見えるのは、1次請けの数字です。そこで話がついていても、その下まで同じとは限りません。
明日からできること
直近半年で来た値上げの相談を、一つ取り出します。そして応じたかどうかではなく、金額が動いたかどうかを書きます。話を聞いて事情も分かった、で止まっているなら、この調査の区分では「交渉はア、転嫁はイ」です。557社のうち260社が、そこにいます(同リストを当社が集計)。
動いていない場合に見るのは、請求書ではありません。入っている人です。半年前に経歴を聞いた人が、いま同じ工程にいるか。据え置いた分がどこで吸収されているかは、そこに出ます。
そして委託先に聞くことも変わります。「いくらになりますか」ではなく、「その単価は誰の分ですか」です。上がる分が誰に付くのかが分かれば、据え置いたときに何が起きるかも読めます。