この記事で分かること

  • OSSのポリシーを整備した組織と、OSSを組織として管理する部門を置いた組織の開き
  • 企業が挙げる課題が、この一年でどこへ移ったか
  • ポリシーのどこまでが決めて終わりで、どこからが運用になるか

取引先から、メールが届きます。取引を続けるにあたって、情報セキュリティの確認に答えてほしい。返送の期限も書かれています。

確認票には項目が並んでいて、回答は「はい」「いいえ」「一部」から選ぶ形式です。上から埋めていきます。規程はあります。体制図もあります。

「オープンソースソフトウェア(OSS)の利用について、社内方針を定めていますか」。定めています。去年、作りました。「はい」。

次の行です。「利用しているOSSを把握していますか」。

ここで手が止まります。方針は書いてあります。ただ、いま何を使っているかをまとめた一覧が、社内にありません。

ポリシーを整備した会社は増え、管理する部門を置いた会社は増えていない

IPAが2026年5月13日に公開した2025年度オープンソース推進レポートに、この二つが並んでいます(表2-10)

  • OSSポリシーを整備している組織 36.7%
  • OSPOを設置している組織 4.1%

OSPOは、報告書が「組織的なOSS管理体制」と呼んでいる部門です(2.6.2)。設置済みに計画中を足しても6.9%です(表2-10)

ここで、数字の読み方に注意が要ります。この調査は、前年と回答者の顔ぶれが入れ替わっています。有効回答は799件から362件になり、OSS活用率の高いベンダー系の比率が14.6%から29.6%へ増えました(表2-1、表2-3)

IPAはそのため、2024年度のデータを2025年度と同じ構成に置き直した補正後の値を出しています(2.3.1)。年ごとの変化を比べるには、そちらを使います。

  • ポリシー整備率 32.0% → 36.7%(+4.7pt
  • OSPO設置率 4.8% → 4.1%(-0.7pt

ポリシーの整備は進み、部門を置く動きは進んでいません。IPAは、OSPOについて「実質的にはほぼ横ばい」と書いています(2.6.1)

課題は「わからない」から「人がいない」へ移った

企業が挙げた課題も、この一年で入れ替わりました(表2-9)

減ったものが二つあります。

  • わからない 26.0% → 14.1%
  • ルール・ポリシーなし 31.2% → 20.7%

代わりに、2025年度から上位に並んだものです(表2-9)

  • セキュリティ面の懸念 25.7%
  • 技術ノウハウ・人材不足 21.5%
  • OSS文化が育っていない 18.8%
  • ライセンス遵守・知財体制未整備 17.7%

そして、「経営層の理解・支援不足」は2.5%です(表2-9)

止めているのは経営ではありません。決めることは済んでいて、そこから先の手が足りていない。IPAはこれを「認識段階から実践段階へ移行している」と書いています(2.6.2)

ポリシーには、決める部分と運用する部分がある

ポリシーの、二つの部分 ポリシーには二つの部分がある。一つは一度決めれば済む部分で、使ってよいライセンスの範囲、持ち込むときの手順、誰が判断するか。見直す時期は自社で決められる。もう一つは決めたあとも運用が要る部分で、いま何を使っているかを保つこと、見つかった不具合を追うこと、更新が止まっていないかを見ること。これらは自社の外で変わるため、起きる時期を選べない。片方だけでは効かない。 ポリシー 一度決めれば済む部分 使ってよいライセンスの範囲 持ち込むときの手順 誰が判断するか 見直す時期は、自社で決められる 運用が要る部分 いま何を使っているかを保つ 見つかった不具合を追う 更新が止まっていないかを見る 起きる時期は、選べない 片方だけでは、効かない

一つは、一度決めれば済む部分です。使ってよいライセンスの範囲、持ち込むときの手順、誰が判断するか。見直しは要りますが、見直す時期は自社で決められます。

もう一つは、決めたあとも運用が要る部分です。いま何を使っているかを保ち、見つかった不具合を追い、更新が止まっていないかを見る。これらは自社の外で変わるので、起きる時期を選べません。

片方だけでは、効きません。使ってよいライセンスを決めても、いま何を使っているかを保っていなければ、決めた範囲に収まっているかを言えないためです。決めごとは守られているかもしれませんが、守られていると示せません。

ポリシー整備率とOSPO設置率が9倍近く開いているのは、前半だけで止まっている会社が多いということでしょう。

全部を見るのではなく、どこを見るか

とはいえ、専任の部門を置ける会社は限られます。設置済みが4.1%というのは、そういう数字です(表2-10)

先に決めるのは、見る範囲です。使っているものすべてではなく、動かなくなったときに事業が止まるものから対象にします。

そのうえで、見る間隔を決めます。毎日でなくて構いません。決めてあれば、月に一度でも仕事として回ります。決めていなければ、気づいた人がたまたま動くだけになります。

同じレポートで、OSSへの貢献活動を「特に活動していない」と答えた組織が69.9%あります(図2-1)。使う側に回っている組織のほうが多い、ということです。使う側であれば、見るものは自社が入れたものに限られます。

明日からできること

いま動いているシステムを一つ選び、そこで使っているOSSを書き出せるかを見ます。

書き出せないなら、それが最初の作業です。書き出せるなら、次はその一覧が、いつ時点のものかを確かめます。

そのうえで、誰が見るかを決めます。ここまで決まって、ポリシーが効きはじめます。